最近よく耳にするようになった「SDGs」という言葉をご存じでしょうか。このSDGsは、実は車にも大きく関係しているのです。ここでは、SDGsと車の関係や、SDGsを実現している車についてご紹介します。
目次
SDGsとは?
「Sustainable Development Goals」の略称であるSDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟の193か国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた持続可能な開発目標のことです。そんなSDGsについて詳しく見ていきましょう。
SDGsの17の目標
SDGsでは持続可能な社会を目指すために下記の17の目標を掲げています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナシップで目標を達成しよう
このように、貧困や飢餓の問題から健康や教育、エネルギーや環境問題など、幅広い視点で持続可能な社会を目指していることが分かります。
日本におけるSDGs
SDGsでは毎年6月、国ごとにSDGsの達成度を点数化してランキング形式で発表しており、2020年の日本の順位は17位でした。目標別の達成度を見ると、教育・産業・平和などの面では目標を達成している一方で、エネルギーや環境問題の面では主要な課題を残しているのが現状です。こうした結果を受けて菅義偉首相は、2030年度の温室効果ガスの削減目標を2013年度比で46%削減することを、2021年4月22日に開催された地球温暖化対策推進本部で発表しました。菅首相は「この目標は決して容易なものではない」としたうえで、「野心的な目標を掲げることで世界の議論をリードしていきたい」と述べました。現在、温室効果ガスの排出量が世界5位である日本は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。また、この地球温暖化対策推進本部で菅首相は、下記の5つの目標に取り組むと発表しました。
- 再生可能なエネルギーなど脱炭素電源の最大限の活用
- 投資を促す刺激策
- 地域の脱炭素化への支援
- グリーン国際金融センターの創設
- アジアなど世界の脱炭素への移行の支援
電気自動車とSDGs
2017年度の日本における温室効果ガス排出量の構成比は運輸部門が全体の16.8%を占めており、その運輸部門の温室効果ガス排出量の約8割は車に起因しています。そこで近年注目されているのが、二酸化炭素を一切排出しない電気自動車です。電気自動車がSDGsにどのような影響を及ぼすのか見ていきましょう。
二酸化炭素排出量ゼロ
電気で動くモーターを駆動力にして走る電気自動車は二酸化炭素を一切排出しないため、ガソリン車に比べてSDGsであると言えます。しかし、実は現時点では、電気自動車を製造する段階で、ガソリン車よりも多く二酸化炭素を排出しているのです。走行中に排出する二酸化炭素がゼロであっても、電気をつくる方法である電源が二酸化炭素を多く排出するものであれば、電気自動車は完全なるSDGsとは言えません。
とはいえ、エネルギー業界は常に進化し続けており、再生可能エネルギー・自然エネルギー・クリーンエネルギーは非常に速いスピードで普及しています。こういったクリーンエネルギーが今後どんどん普及し、二酸化炭素を排出しない「ゼロエミッション電源」だけで電気自動車用の電気をつくることができれば、車の駆動をめぐる二酸化炭素の排出量をゼロにすることも可能になります。
蓄電池の活用
電気自動車は大容量のバッテリーを搭載しているため、単なる移動手段としてだけでなく「走る蓄電池」として社会インフラの一部を担うことができます。リーフなどの電気自動車を展開している日産自動車では、もしものときには電気自動車を走る蓄電池として活用し、被災地を支援することで社会全体を変革する「ブルー・スイッチ」という活動を展開し、SDGsを実践しています。
令和元年に発生した台風15号による千葉県大規模停電において、日産自動車は53台の電気自動車を停電地域の自治体や福祉施設に貸与し、非常用の電源として活用しました。電気自動車は給電中も無音で排気ガスを排出しないため、屋内でも利用することができます。また、バッテリー容量が大きいため長時間給電することが可能で、パワームーブという給電装置を使うことで、数多くの電化製品を同時に使用することができるのです。実際にいくつかの自治体では電気自動車を導入し、災害時などの非常用電源としての活用を考えています。
もちろん、災害などによって自宅が停電した場合にも、電気自動車を活用することができます。日産自動車の試算によると、電気自動車リーフをフル充電して使用した場合、各家電の消費電力を考えると4日間生活することができるそうです。実際に台風15号によって自宅が停電した際、リーフの電力を使用して難を逃れた方もいらっしゃるようです。
国内の電気自動車
日産 リーフ
日産が2010年から販売しているリーフは、世界に先駆けて一般乗用車として販売が開始された電気自動車です。日本発売と同時にアメリカやヨーロッパをはじめとした世界中で販売され、電気自動車ならではの加速フィーリングと静粛性で高い人気を維持し続けています。バッテリーにはリチウムイオンバッテリーが搭載され、4kWhの充電能力を誇っています。モーターの最高出力は110kW、最大トルクは320N・mとなっており、アクセルを踏み込んだ瞬間に一気に加速する、電気自動車ならではの俊敏なレスポンスを楽しむことができます。
- メーカー希望小売価格:3,326,400円~
- 渡航距離:458km [62kWh]/322km [40kWh]
- 全長:4,480mm
- 全幅:1,790mm
- 全高:1,560mm
- 定員:5人
ホンダ Honda e
2020年10月にホンダから販売が開始されたHonda eは、街中での取り回しの良さと力強いモーター、ホンダならではの後輪駆動による走りの楽しさを実現した電気自動車です。丸みを帯びたかわいらしいデザインが特徴のエクステリアに、メーターパネルとサイドカメラを含む5つの液晶画面が設定されたインテリアも注目を集めています。また、最新のAIを用いたコネクテッド技術による「Honda Personal Assistant」によって、車とライフスタイルをシームレスに繋げることができる都市型コミューターです。
- メーカー希望小売価格:4,510,000円~
- 渡航距離:308km
- 全長:3,895mm
- 全幅:1,750mm
- 全高:1,510mm
- 定員:4人
マツダ MX-30 EV
2021年1月にマツダ初の電気自動車として販売が開始されたMX-30 EVは、先行して販売されていたマイルドハイブリッドモデル同様、観音開きのドアが特徴のクーペスタイルSUVです。MX-30 EVはマツダ独自の「電動化技術e-スカイアクティブ」を採用し、マツダが追求し続けている走りを電気自動車でも変わらずに実現させています。また、プラットフォームやボディ強化などを施した「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」を採用しています。
- メーカー希望小売価格:4,510,000円~
- 渡航距離:256km
- 全長:4,395mm
- 全幅:1,795mm
- 全高:1,565mm
- 定員:5人
三菱 i-MiEV
2010年に三菱から個人向けに販売が開始されたi-MiEVは、三菱から販売されていた「i」のエンジンとガソリンタンクをモーターとリチウムイオン電池に入れ替えた電気自動車です。販売当初は軽自動車規格でしたが、2018年のマイナーチェンジで小型自動車規格に格上げされました。三菱が独自に開発した「ミーブ・オペレーションシステム」により、バッテリーの状態や回生ブレーキ機能による発進制御、走行時のブレーキ優先制御などのセーフチェックを行うことができます。
- メーカー希望小売価格:3,003,000円~
- 渡航距離:164km
- 全長:3,480mm
- 全幅:1,475mm
- 全高:1,610mm
- 定員:4人
まとめ
日本政府が2030年代半ばにも、日本でのガソリン車の新車販売を禁止する方向で最終調整に入ったことが報じられました。自動車メーカーなどの意見調整もあるため、今後どうなるのかはまだ未定ではありますが、世界的に電気自動車への乗り換えを推進する動きになっていることは間違いありません。これから車の乗り換えを検討している方は、SDGsに取り組むことができ、災害時などにも活用できる電気自動車を視野に入れてみてはいかがでしょうか。