インターネット上のオークションやフリーマーケットを利用して、個人で車の売買取引を行う方が増えています。このように個人間で車の譲渡をした時に必須となる手続きが、自動車の名義変更手続きです。ディーラーで車を購入すると、名義変更などの車の登録はディーラーが行ってくれるため、自分で手続きを行う機会はあまり多くありません。
こちらでは自分で車の名義変更をする時に起こりうるトラブルや、トラブルごとの解決方法をまとめてご紹介します。車の名義変更をする予定がある方はぜひ参考にご覧ください。
目次
名義変更手続きとは
車の名義変更とは、車の所有者登録情報を変更する移転登録手続きのことです。
名義変更を行う場所はどこ?
車の名義変更手続きを行う事務局は、車の所有者の居住地を管轄する事務局となっています。
普通自動車の名義変更手続きを行う場所は、名義変更をした後に車を使用する本拠位置を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所で行います。軽自動車の名義変更手続きは、名義変更後の新使用者の使用の本拠の位置を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室で行います。
ただし、市境に住まれていて自宅住所と車の保管場所の駐車場とで、市町村区域が違うという方もいらっしゃるでしょう。運輸支局は市ごとに管轄が決まっているため、それぞれが別の管轄の運輸支局ということも少なくありません。車の名義変更をする時は駐車場ではなく、自宅住所の市町村を管轄する運輸支局となりますので、登録される運輸支局はお住いの市町村を管轄している運輸支局となります。
また、車の名義変更手続きで保管場所が変更になるときは、車庫証明が必要です。車庫証明は車の保管場所の駐車場がある市を管轄する警察署で取得をしてから、自宅住所の区域を管轄する運輸支局で名義変更手続きを進めましょう。
個人売買をした車の名義変更で起こりうるトラブル

個人売買で車の名義変更をする時に必要な書類
個人売買で購入した自動車に車検有効期間が残っている場合は、新所有者もしくは旧所有者が車の名義変更手続き(移転登録)を行います。
名義変更手続きには、車を購入した新所有者と売却した旧所有者の書類の準備が必要です。
個人売買時の車の名義変更に必要な書類(新所有者と新使用者が同じ場合)
- 旧所有者の発行日から3か月以内の印鑑証明書
- 旧所有者の印鑑証明書の印鑑が押印された委任状
- 旧所有者の印鑑証明書の印鑑が押印された譲渡証明書
- 新所有者の発行日から3か月以内の印鑑証明書
- 新所有者の印鑑証明書の印鑑
- 自動車保管場所証明書(車庫証明)
- 自動車検査証の原本
- 第一号様式申請書
- 手数料納付書(手数料が検査登録印紙500円を貼付)
- ナンバープレートの費用
車の名義変更手続きを申請する際の第一号様式申請書は、運輸支局窓口でも配布しているほか、運輸支局のウェブサイト等でダウンロードし、適切に印刷されていれば使用可能です。移転登録手続きの準備に必要なものを揃えたら、新所有者が車を使用する本拠位置を管轄する運輸支局で、受付時間内に申請を行って名義変更手続きをします。オークションやインターネットフリマでの車の売買取引の場合は特に、旧所有者に書類の準備がすでにできているか確認をしておくことをおすすめします。印鑑証明書の期限切れに気を付けて手続きは早めに行いましょう。
個人売買で買い手が車の名義変更をしなかった
個人売買で車を売却して、買い手側の新所有者に手続きを一任したが、購入後に車の名義変更がされていなかったというトラブルが起こる場合があります。このような場合、以下の3つの問題や被害が発生する可能性があります。
1つ目は自動車税のトラブルです。自動車税は4月1日時点で登録されている使用者へ年額の請求が行われます。そのため、名義変更が行われないまま年度をまたいだ場合、手元にない自動車であっても自動車税の請求は売り手である旧所有者へ来てしまうのです。
2つ目は交通違反に関するトラブルです。買い手が名義変更をしないまま車を使用し、使用中に駐車禁止を行うまたは速度超過違反などの交通違反をした場合、買い手が放置違反金等の反則金を支払わない時は、車検証上の使用者に登録されている売り手へ反則金請求の督促が届きます。ただし、この交通違反をした違反日の運転者が売り手ではないと弁明書にて弁明し容認されれば、納付命令を行われることはありません。
3つ目は犯罪被害にあう可能性です。買い手が名義変更をしないまま当該車両を運転して、当て逃げやひき逃げ等の交通事故を起こした場合、警察による捜査が行われます。この時、交通事故を起こした自動車の車両登録番号等から車の車検証上の登録にある売り手が捜査対象となってしまうのです。
個人売買で買い手が名義変更をしなかった時のトラブル解決策
車を個人売買取引で売却し、新所有者に名義変更を一任して書類を渡したがしてくれないというトラブルが起こった時の解決策は、3つあります。
1つ目は、買い手へ名義変更をするよう連絡をする、または催促状を送るといった方法です。特に強く催促を掛けるなら、文書を作成し内容証明郵便で催促を送ると良いでしょう。内容証明とは、いついかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本により郵便局が証明する制度です。買い手が受け取れば、受け取った証明となり、より強い催促としての効力があります。
2つ目は、名義変更の手続きを売り手が行う方法です。買い手が名義変更手続きをしないまま時間がかかっている、書類自体の準備は出来ているが運輸支局へ行く時間がないと言われている場合、協力して売り手が名義変更を行うことも可能です。
3つ目は、個人売買であっても取引開始の際に契約書を結んでおき、名義変更手続きの期限を切っておいて期限内に手続きをされない場合は契約解除を申し立て、車を返してもらう方法です。トラブルに巻き込まれないためにも前以て名義変更に関する契約内容の確認するようにしましょう。
個人売買をした車の名義変更でトラブルが起こっていないか確認する方法
売り手側の旧所有者は、手元に車がない状態でも名義変更または廃車手続きが完了しているかどうか、ご自身で確認することが可能です。
確認するには、車の車両登録番号(ナンバープレートの番号)と車台番号の全桁を控えておき、最寄りの運輸支局で登録事項等証明書の交付請求を行います。登録事項等証明書は現在の車の登録状況が記載されている書類で、所有者情報もしっかりと確認ができます。
ただ運輸支局は電話などで情報を開示することは出来ませんので、必ず来局し交付申請する必要があります。また、車台番号のみや車両登録番号のみでは、登録情報悪用防止のため交付請求が出来ません。確認をする時は必ず、両方の情報を確認しなければいけません。新所有者が協力的でなく、新しい車の車両登録番号等を教えてもらえない場合は手続きが未完の可能性があります。旧所有者が登録していた車両登録番号で交付請求を行ってみましょう。
家族から車を譲り受ける場合の名義変更で起こりうるトラブル

家族から車を譲渡された時の名義変更手続きに必要な書類
家族の車を譲渡されることになった場合や、家族が亡くなって車を相続する場合など、家族間であっても車の所有者が変更になる場合は名義変更手続きが必要になります。
家族間の車の譲渡による名義変更に必要な書類(新所有者と新使用者が同じ場合)
普通自動車を家族から譲渡された時に行う名義変更手続き(移転登録)で必要な書類は、個人売買での取引時と同様になります。ただし、家族の遺産として相続する場合は、以下のような書類の準備が必要です。
- その車の所有者の死亡と、相続人全員との関係がわかる書類(戸籍謄本又は戸籍の全部事項証明書)
- 新所有者(相続人)の印鑑証明書
- 新所有者(相続人)の印鑑証明書の印鑑
- 新所有者(相続人)の車庫証明書(証明から1カ月以内)
- 自動車検査証
- 第一号様式申請書
- 手数料分の検査登録印紙500円
- ※前後のナンバープレート
お住まいが同じで車の保管場所も変わらないのであれば管轄する運輸支局は同じままですが、お住まいの場所が異なり管轄する事務局が変わる場合は、運輸支局へ車の持ち込みをしてナンバープレートを取り外して返納し、新しいナンバープレートの交付申請が必要になります。
車の遺産相続については誰が相続するかで必要書類が変わります。相続人が複数いる場合は、代表相続人を決めたときの以下のいずれかの書類の提出が必要になります。下記書類は運輸支局提出時は原本が必要になります。ただし原本提出後受理されたら返却を求めることは可能です)
- 相続人全員の実印を押印した遺産分割協議書
- 公正証書による遺言書、または家庭裁判所による検認済の遺言書
- 遺産分割に関する調停証書
- 遺産分割に関する確定証明書付の審判書
- 確定証明書付の判決謄本
遺産相続の手続きに関しては書類も複雑になることが多いため、まずは運輸支局の窓口等でご相談されることをおすすめします。
家族から譲渡された車の名義変更に必要な書類が足りない
家族間の車の譲渡でも、前述の通り必要な書類を揃えなければいけません。しかし譲渡を受けてから長い期間、名義変更手続きを行っていない方も多く、その間に必要書類を紛失されている場合があります。
名義変更に必要な「車検証の紛失トラブルが発生した」時の解決策
名義変更に必要な車検証が見つからない場合は、車の使用者であるご家族の使用の本拠位置を管轄する運輸支局で、車検証の再交付申請を行います。
車検証の再交付に必要な書類
- 使用者の印鑑
- 車検証紛失の理由書
- 第3号様式の申請書
- 手数料納付書(検査登録印紙300円を貼り付けたもの)
- 申請者の本人を確認できる公的な証明書類
家族の車の車検証が見つからず「所有者が確認できない」時の解決策
車の使用者が亡くなっていて印鑑が用意できない場合や、ナンバープレートが付いていないため廃車済の可能性がある場合は、登録事項等証明書の交付請求を行って、現在の自動車の登録内容を確認しましょう。
登録事項等証明書の交付請求に必要なもの
- 車両登録番号(ナンバープレート)、車台番号の全桁の控え
- 現在証明取得の場合300円の検査登録印紙を貼り付けた手数料納付書
- 請求者本人を確認できる公的な書類
- 請求する理由が記載された理由書
※例:亡くなった家族の自宅敷地内に車があり登録内容を確認して廃車をしたい、私有地に放置車両があり車検証が見当たらないため所有者を確認したい、など
車の保管場所標章(ステッカー)を紛失した場合の解決策
車庫証明を警察署で申請し、届出に基づいて交付された保管場所標章(ステッカー)は自動車の後部ガラスまたは、後部ガラスがない場合は後面ガラスに貼り付けて表示する義務が、車の保有者にはあります。また、トラックのように後面ガラスが後方から見えない車の場合は、車の左側面に貼り付けて表示します。
もしも保管場所標章が減失したり、事故等で損傷し識別が困難になった場合は、標章交付手数料500円で再交付を求めることが出来ます。
未成年の家族が車を相続し名義変更する場合
車の相続では、相続人が未成年者の家族となる場合もあります。未成年であっても車の所有者になることは可能ですが、通常の移転登録手続きに必要な書類の他に下記の書類を用意する必要があります。
- 新所有者(未成年)の親権者が確認できる【戸籍謄本】または、【戸籍の全部事項証明書】(発行後より3か月以内)
- 親権者の同意書に親権者の実印を押印されたもの。
- 親権者のうち1名分の印鑑証明書(発行後より3か月以内)
- 親権者の印鑑証明書 ※ 親権者のうち1名のもの(発行後3ヶ月以内のもの)。
車の使用者は同じでも名義が変わったら手続きは必要?
車を使用している使用者は同じ人物のままで、使用者の氏名が改姓して変更が必要になったり、使用者のもつ法人名義から使用者の個人名義へ変更する場合があります。このようにイレギュラーな名義変更の手続きはどのように行うのでしょうか。
結婚して車の使用者の苗字と住所を変更したい時の手続きは
所有者(または使用者)が結婚をして、改姓や引越しによって住所が変更となった場合は、移転登録手続きではなく変更登録手続きを行いましょう。変更登録手続きは、新しい居住地域を管轄する運輸支局で行います。
所有者の変更登録手続きをする時に準備するもの
- 自動車検査証
- 現在の住所・氏名と車検証に登録されている内容とのつながりが分かる書類(発行後3か月以内のもの)
- 印鑑
- 車庫証明書
- 登録手数料350円
- OCRシート第1号様式登録申請書
引越しによって住所が変わることで運輸支局の管轄も変わると、変更登録手続きにはナンバープレートの変更も伴います。そのため、当日は運輸支局まで自動車の持ち込みが必要です。ナンバープレートの取付場まで車を移動し持ち込みましょう。
会社の法人名義の車を社長の個人名義へ変更する時の手続きは
所有者を法人から個人に変更する場合は、名義変更(移転登録)手続きとなります。車の登録には車庫証明をとり、車の使用の本拠の位置の登録が必要です。現在会社の法人名義で登録されている場合は、使用の本拠の位置が、会社の所在地から変更したいと考えている個人(経営者)の自宅へ変更になります。当該の車自体は会社のある北海道で継続使用を考えており、名義だけを個人名義に変更したいと考えている場合は名義変更ができません。
それは、使用の本拠の位置が異なるため、車庫証明をとることが出来ないからです。道路使用の適正化と道路における危険防止のため、車の保有者には自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務付けられています。
駐日外国籍の方が日本で引越した時の車の手続きは
自動車の所有者が駐日中の方で、海外から転居をして住所が変更になった時は、住所部分の記載変更を行う変更登録手続きが必要です。
平成24年7月以前までは外国人登録原票の写しを取得していただき、前住所と現住所の転居の証明として提出がされていましたが、同年の外国人登録法の廃止と在留管理制度の施行に伴い、外国人の方の住民基本台帳制度がスタートし住民票の写しを取得出来るようになったため、現在提出する書類は、住民票の写しとなっています。
ただし、自動車検査証の住所変更登録には前住所の記載が必要です。役所で取得される際は、変更登録に必要なため、前住所との転居の履歴が記載されているかを確認してから、住民票の写しを取得されることをおすすめします。
まとめ

こちらでは、名義変更手続きで起こり得るトラブルや、トラブルの解決策について詳しく解説しました。
名義変更手続きをするには、管轄する運輸支局または自動車検査事務所の受付時間中に来局し、書類を提出して申請をする必要があります。必要書類を間違えてしまったりすると、何度も行き直しとなり大きな負担となります。手続きが必要になった場合は、しっかり余裕をもって書類を準備し手続きを終えられるようにしておきましょう。特に普通自動車の名義変更では、旧所有者と新所有者の3か月以内に取得した印鑑証明書が必要になります。書類に不備があるなどして手続きが遅れてしまい、証明書の期限が切れてしまえば書類の取り直しからとなります。書類を預かって手続きを進める方は、取得日に注意して速やかに実行することをおすすめします。