車輪付きの板に取り付けられた電動式のモーターによって走行する電動キックボードは、近年、手軽で便利な走行手段として注目されています。都市圏では、電動キックボードのシェアリングサービスが開始されるなど普及が進む一方で、法規制が厳しく、いくつかの条件を満たさなければ公道を走行することはできません。
こちらでは、電動キックボードで公道を走行するための条件や、規制緩和に向けた動きなどについて詳しく解説していきます。
目次
電動キックボードに運転免許は必要?

電動キックボードを公道で使用する際、特定小型原動機付自転車の基準を満たしていない車体の場合のみ運転免許が必要になります。どのような免許が必要になるのでしょうか。
原動機付自転車を運転できる免許が必要?
電動キックボードは、出力によって扱いが異なります。
ただし、特定小型原動機付自転車の基準である「車体の大きさが長さ190cm以下、幅60cm以下」であること、「原動機の定格出力が0.60kW以下」であること、「時速20kmを超える速度が出せず、走行中に最高速度の変更を加えたりできないこと、AT機構をもち、最高速度表示灯が備えられてること、ナンバープレートが付いていて自賠責保険加入済み」といった条件を守らなければいけません。
上記基準に満たない電動キックボードについては、原付免許、普通二輪免許、大型二輪免許、大型特殊免許、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかの運転免許が必要になります。また、原動機付自転車と同様に、公道での走行にはヘルメットの着用が必須になります。無免許で基準に満たない電動キックボードの運転をした場合は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金に科せられる可能性があります。
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の交通ルール
電動キックボード(特定小型原動機付自転車の基準を満たす)は、2023年7月から原付免許がなくとも公道を走行することができるようになりました。それに伴い、交通反則通告制度及び放置違反金制度の対象となっています。電動キックボードで公道を走行する時の交通ルールをご紹介します。
| 交通ルール | 罰則・罰金 |
|---|---|
| 16歳未満の運転の禁止(16歳未満への貸与も同様) | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金 |
| 飲酒運転の禁止 | 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 二人乗りの禁止 | 5万円以下の罰金 |
| ながら運転の禁止 (スマートフォンでの通話・画面注視しながらの走行) | 1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 |
| 交差点では二段階右折すること | 5万円以下の罰金 |
| 一時停止(停止線の直前では) | 3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金 |
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は最高速度20kmまでと決まっていますが、特例特定原動機付自転車については最高速度時速6キロ以下に設定されており、最高速度表示灯を点滅させている(基準条件にあてはまる)車体の場合は、歩行者優先ではあるものの歩道での走行が可能となっています。(歩道を通行する際は車道側に最も近い側を通ります)
ナンバープレートが必要

公道で電動キックボードを使用するには、ナンバープレートを取り付ける必要があります。また、ナンバープレートを取り付けるにあたり、原動機付自転車を所持する場合と同様の義務が生じます。
軽自動車税原納付義務
電動キックボードは原動機付自転車の扱いであるため、原動機付自転車を所持している場合と同様に、軽自動車税を納付しなければなりません。軽自動車税とは、毎年4月1日時点で軽自動車や原動機付自転車、小型特殊自動車などを所有していると課せられる税金のことです。お住まいの市区町村窓口にて電動キックボードの登録手続きを行い、ナンバープレートの交付を受けることで、次年度から軽自動車税を支払うことになります。納付する軽自動車税の税額は、出力が0.6kW以下や0.8kW以下の場合は年間で2,000円、0.8kW以上1kW以下の場合は年間で2,400円になります。
自賠責保険への加入義務
公道を走行するためには、自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済に加入する必要があります。自賠責保険に加入していると、万が一事故を起こしてしまった場合でも、死亡による損害を与えてしまった場合は最高3,000万円、障害による損害を与えてしまった場合は最高で120万円の保険金が支払われます。自賠責保険料は出力が0.6kW以下の電動キックボードの場合、年間で7,500円になります。また、自賠責保険に加入していない状態で公道を走行した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
電動キックボードに必要な装備

電動機付自転車と同様の扱いである電動キックボードは、道路運送車両法の保安基準を満たしている車両でなければ、公道を走行することができません。公道を走行するために必要な装備にはどのようなものがあるのでしょうか。
制御装置(ブレーキ)
道路運送車両法の保安基準第61条では、ブレーキの保安基準を以下のように定めています。
原動機付自転車(付随車を除く。)には、走行中の原動機付自転車が確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、かつ、平坦な舗装路面等で確実に当該原動機付自転車を停止状態に保持できるものとして、制動性能に関し告示で定める基準に適合する独立に作用する2系統以上の制動装置を備えなければならない。(道路運送車両の保安基準 第61条(制動装置)より)
つまり、平地で確実に停止できるブレーキであることが公道走行の条件となるため、独立したブレーキを前後で制御できる電動キックボードでなくてはなりません。グローバル仕様のものや安価なモデルの電動キックボードの中には、電子ブレーキやフットブレーキを採用しているものも多くあります。しかし、電子ブレーキは電源が入っていなければ車輪が止まらないことが多く、ブレーキをかけても停止できない状況になることがあるため、保安基準に反することになります。
方向指示器(ウインカー)
道路運送車両法の保安基準第62条の2では、最高速度が20キロ未満の場合、ウインカーは省略することができると記されています。しかし、道路交通法第53条でウインカーが装備されていない場合でも、右折や左折をする際は手信号にて曲がる方向を示さなくてはならないことが定められています。電動キックボードは両手でハンドルを掴んでいなければ不安定な状態になるため、手信号で曲がる方向を示すために片手を離して運転するのは危険です。公道を安全に走行するためには、ウインカーが装備されているものを選ぶようにしましょう。
その他の必要な装備
- 前照灯(ヘッドランプ)
- 後写鏡(バックミラー)
- 番号灯(ナンバープレート照明灯)
- 尾灯(テールランプ)
- 制動灯(ブレーキランプ)
- 後部反射器(リフレクター)
- 警音器(ホーン)
- 速度計(スピードメーター)
- ナンバープレート取付板
制御装置と方向指示器以外にも、公道で電動キックボードを使用するためには下記の装備が必要になります。
ただし、最高速度が20キロ未満の場合、速度計、尾灯、制動灯はなくても公道を走行することができます。

まとめ
現時点では電動キックボードは電動機付自転車と同じ扱いになるため、公道を走行する際は道路交通法ならびに道路運送車両法を遵守しなければなりません。実際に道路交通法に違反した状態で電動キックボードを使用したことによる人身事故や物損事故なども発生しており、走行における安全性なども問題視されています。電動キックボードに関する規制は今後緩和されていくことも予想されますが、現時点でのルールをしっかりと守り、安全に走行するようにしましょう。


