2024年4月に国際エネルギー機関IEAによって発表された「2024年の世界EV見通し」では、2023年の世界新車販売EVの台数は約1,380万台となっており、その前年に比べて35%増となっていました。今後も、あらゆる自動車メーカー・自動車部品メーカーが、カーボンニュートラル宣言を視野に入れてEV開発に力を入れてくると予想されています。車の購入を検討されている方にとって、特に現在はガソリン車を所有している方は、次はどのパワートレーン車に乗り換えるべきか悩んでいる方も少なくないでしょう。
こちらでは、電気自動車への乗り換えを選択肢にいれるか検討中の方へ、電気自動車のリセールバリューや所有する上でデメリットはあるか、など詳しく解説します。
電気自動車とは
カーボンニュートラル(脱炭素化社会)に向けて、各自動車メーカーが電気自動車の製造に力を入れ始めていることもあり、昨今では電気自動車がニュースに登場する機会も少なくありません。エコロジーの観点や燃費性能の高さといった点でも、電気自動車に対する世間の関心は高まっています。
電気自動車の特徴
電気自動車はエコカーとして広く知られています。ガソリン車のように燃料を内燃機関で燃焼して車を動かす仕組みではないため、環境汚染問題となっている炭素の発生もなく、環境にやさしい仕組みをもっているためです。電気自動車の動力源は燃料ではなく、燃料電池に充電した電力となっていて、電動モーターが回転して駆動力に代わります。燃料電池自体の開発も進み容量や重量なども多種多様化していることから、大きくなった燃料電池の容量により、満充電時の航続距離も伸びて、さらに利用がしやすくなっています。
電気自動車の構造
電気自動車の構造はどのようになっているのでしょうか?電気自動車の中核をなしている機構は以下の3つです。
- 電動モーター
- モーターのコントローラー
- バッテリー
電気自動車の機構は、コントローラーがバッテリーに充電してある電力を制御送電し、送電された電力によってモーターが回転すると車の駆動力が発生する仕組みです。運転者がアクセルペダルを踏みこむと、アクセルペダルとペアのポテンショメータ(可変抵抗器)が接続されます。ポテンショメータは、モーターコントローラーにどの程度の電力が供給されるかを知らせる信号の働きをしています。信号を受け取ったコントローラーは、供給に合わせてゼロパワー(停車時)・フルパワー(アクセルペダルを最大まで踏んだ時)、またはその間の任意のパワーレベルの電力をバッテリーからモーターへと供給するため、電気の形をDCからACへと調節します。供給された電力によりモーターが回転し、車は動きます。
直流(DC)から交流(AC)に電気を形を調節する必要がある
もともとバッテリーパックから取り込んだ電気の形はDC(直流)ですが、車内のモーターで使用できる電気の形であるAC(交流)に変換する必要があり、コントローラーはその電気の形を調節する役割を持っています。
電気自動車のリセールバリューは
実は、2023年の世界車名別販売台数1位となった車は、テスラが販売する「モデルY」で、販売台数は約122万台となっています。同年2位はトヨタの「RAV4」で約107万台となっており、モデルYは前年比64%増とかなりの勢いで販売台数を伸ばしている車です。
電気自動車に乗り換えを検討されるならば、電気自動車のリセールバリューも気になるのではないでしょうか。電気自動車で最も売れているモデルYの製造メーカー【テスラ】が販売している【モデル3】のリセールバリューを例に、電気自動車のリセールバリューについて解説します。
リセールバリューとは
リセールバリューとは、新車購入した車を数年後売却する時、新車価格に対してどのくらいの買取価格がつくのかを数値化した残価率のことです。一般的に売却の目安時期とされる新車以降初めての継続車検を受ける3年目、2回目の継続車検を受ける5年目のリセールバリューが参考にされやすくなっています。
テスラ【モデル3】のリセールバリューはどのくらい?
こちらでは、2019年から販売されているテスラ【モデル3】の3年落ち・5年落ちのリセールバリューをご紹介します。
テスラ【モデル3】の3年落ちリセールバリュー(R3年式)
グレード | 新車価格 | リセールバリュー |
---|---|---|
ロングレンジ 4WD | 499万円 | 51% |
パフォーマンス 4WD | 717万円 | 43% |
テスラ【モデル3】の5年落ちリセールバリュー(R1年式)
グレード | 新車価格 | リセールバリュー |
---|---|---|
スタンダードレンジプラス | 511万円 | 36% |
パフォーマンス 4WD | 703万円 | 32% |
電気自動車のリセールバリューと一般的なリセールバリュー
一般的な車のリセールバリューは、3年落ちで50~60%、5年で40~50%とされています。テスラモデル3でいうと、平均に比べて高いとはなりませんでした。そのため、電気自動車を購入して将来の「投資」と考えるのは現段階では難しいかもしれません。
電気自動車を所有するメリット・デメリット
電気自動車に乗り換えると起こり得るメリット・デメリットをご紹介します。
ガソリン車にかかる燃料費>電気自動車の充電にかかる電気料金
近年高騰していることで知られるガソリン料金ですが、2024年11月初旬時点でのレギュラーガソリンの全国平均は167.2円、ハイオクガソリンが177.6円となっています。日本国内ではガソリンのもととなる原油の供給をほぼ100パーセント輸入に頼っていることもあり、ガソリン価格は原油価格に直結することから現時点で下落する見込みは見られていません。今後も高止まりすることが予測されているため、ガソリンの給油を不要とする電気自動車の場合は、ガソリン代でかかる燃料費負担は気にしなくてすむでしょう。
電気自動車の燃料となるのは電力ですので、電気料金が燃料費ということになります。もしもご家庭の駐車場で充電設備を設置し、車の充電をするのであれば、家庭の電気料金プランが電費に関わってきます。夜間~深夜にかけて電気料金が安くなるプランなども設定している電力会社もあるため、車を使用しない深夜に充電をすると電気料金が抑えられる場合もあります。現在のガソリン料金から考えると、電気自動車の電気料金の方が金額で考えれば抑えられるでしょう。
電気自動車搭載必須の大容量バッテリーによるデメリット
電気自動車に欠かせない大容量バッテリーですが、現在の鉛蓄電池技術上いくつかのデメリットが発生してしまいます。
電気自動車のリチウムイオンバッテリー(鉛蓄電地)によるデメリット
- 重量があるため車重が増える
- 大きいため空間が制限される
- 大容量ではあるが限りがある
- 充電に時間がかかる
- バッテリー寿命があり交換が必要
- 修理時には部品代が高価
まず、電気自動車に搭載される大容量バッテリーは、大きな容量を必要とするために重量があります。車重が重い程、車を動かすためのエネルギーが必要になり、コストパフォーマンスに影響します。また、バッテリー自体も大きいため車室に置くとかさばり場所をとってしまいます。そのため、ほとんどのリチウムイオンバッテリーは車両下部に配置されます。搭載されるバッテリーの容量は大容量とはいっても限りがあるため、満充電したとしても航続距離には限界があり、夏・冬にかけて空調設備等で電力を多く必要とする時期はコストが増えます。
また、リチウムイオンバッテリーは一般的なガソリン車に搭載されるバッテリーよりは長く使用できるものの、消耗品となりますので時期が来れば交換が必要となります。ガソリン車に搭載される蓄電バッテリーとは用途が異なるため大容量バッテリーの寿命は長いものの、走行距離でいえば10万キロ以上、車の登録時期から5年経過で交換時期の目安となってきます。大容量バッテリーは繊細な構造をもつため、部品自体が高額なこともあり、交換時期がくると部品交換ではなく乗り換えを検討する人も少なくありません。
充電スポットの普及率がガソリン車に及ばない
電気自動車の充電ステーションの普及率は決して高いとは言えません。ガソリンスタンドに対して、電気自動車の給電施設はまだまだ足りない現状があります。また、急速充電スポット等でない限り充電にも時間がかかるため、自宅に充電設備を配置できない場合は電気自動車を所有しづらいという声も多くあります。
電気自動車は安全な車になった?
ここまで電気自動車について詳しく解説してきましたが、電気自動車への乗り換えを検討されるのであれば、その安全性についても気になるのではないでしょうか。
電気自動車の静寂性による危険への対策
電気自動車はガソリンエンジンではなく電気モーターで駆動します。電気モーターの作動音は小さく、圧倒的に静かであるため、歩行者はそばに電気自動車が走行していても気づかないということがあるようです。歩行者などの安全のためにわざと作動音や警告音を発生させるといった仕組みをもっている電気自動車も販売されています。
電気自動車は事故の際安全なのか?
車は便利な乗り物ではありますが、非常に危険な側面も持っています。2023年の交通事故死者数は2,678人となっており、8年ぶりに増加していました。自動車は重量があり大きな乗り物ですので、誤った運転操作や過失などで大きな事故につながる可能性があるのです。
電気自動車は内燃機関を持たないためガソリンによる引火の不安はありませんが、リチウムイオンバッテリーという大きなエネルギーを発生させる充電装置を積載しています。リチウムイオンバッテリーというと、スマートフォンのモバイルバッテリーがカバンの中で発火した等のニュースも話題となったため、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、日本国内で最も長く販売され続けている日産の電気自動車リーフは、2010年の発売開始から今まで、バッテリーを起因とした車両火災事故の発生件数ゼロとなっています。実は国産EVの車両火災事故は、エンジン搭載の内燃機関を持つ車に比べて、発生率がかなり低いと言われています。
リチウムイオンバッテリーが発火してしまうのは、事故等で衝撃や圧力がかかり電池の内部が分解されてしまったことで、内部でショートが起こって温度が上昇し、可燃性ガスなどが生じて発火することが原因のほとんどとなっています。そのため、リチウムイオンバッテリーを冷たく保つことが安全性を高めるために不可欠なこととされています。外国産EV車で国内でも見かけるテスラは、冷却水をバッテリーパック全体に循環させて、車の走行中にできるだけ温度を低く保つような仕組みを作り安全性を高めています。
まとめ
電気自動車への乗り換えを検討中の方へ、現時点でEV車に乗り換えるメリットやデメリット、将来的なEV車のリセールバリューなどをご紹介しました。今電気自動車に乗り換えることは、将来的に燃料費や維持費を抑えられる点では大きなメリットを感じますが、外出先で給電スポットが少ないといった、EV車を使用する上での不満点が多いといったデメリットもあります。特に都市部と郊外では給電についての普及率は差がありますので、購入を検討されている方はご自身の車の使用拠点でのEV車のメリット・デメリットを総合的に判断して決められることをお勧めします。